【166日目】のりたまとコングルの日
日本のふりかけ文化を語る上で、丸美屋の「のりたま」は欠かせない存在である。ほんのり甘い玉子ときざみ海苔の組み合わせは、老若男女問わず愛される味と言えるだろう。
そんな「のりたま」の歴史は意外と古く、誕生は太平洋戦争後の1959年まで遡る。丸美屋の創業者である阿部末吉氏が、「旅館の朝食のような雰囲気を家庭でも手軽に味わえないか」と考えたのが始まりだったらしい。前身となる「是はうまい」から数えると、「のりたま」は実に90年以上の歴史を誇る。
なぜ急に「のりたま」について語り始めたかと言うと、今日の昼休みに先輩が「のりたま」の美味しい食べ方を教えてくれたからである。
どうやら韓国出身の男の子が「のりたま」を知らなかったらしく、どうしてもその魅力を伝えたかったようだ。先輩の「のりたま」にかける情熱に、私たちは強く心を打たれる。
用意された食材は、冷凍ごはん・豚の角煮・マヨネーズの3点。まずは冷凍ごはんを温め、その上にたくさんの「のりたま」を散りばめる。慣れた手つきで調理する先輩の姿は、かの速水もこみち氏に勝るとも劣らない。
次に先輩はマヨネーズを取り出し、のりたまの上に豪快に放出した。「のりたま」はふりかけという商品特性上、どうしても粉末らしい舌触りが残ってしまう。そこにマヨネーズの食用油が加わることで、ごはん全体がなめらかな食感になるという訳だ。
さらに皆様もご存知の通り、マヨネーズの主材料には酢と玉子も含まれている。もとが玉子同士ということもあって、「のりたま」との相性は抜群である。そこに僅かな酸味も加えることで、味のバランスは更なる高次元へと引き上げられる。先輩の調理センスに脱帽である。
これだけでも至高の料理と言うべき存在に昇華しているわけだが、先輩は決して手を休めなかった。なんと彼は先ほどのごはんの上に、豚の角煮を盛り付け始めたのである。この大胆過ぎる発想に、我々は度肝を抜かれた。思わず「美味しんぼ」のような激しいリアクションを取ってしまいそうになる。
そうして完成した料理は、すぐさま韓国人の男の子の元へと運ばれた。いよいよ実食の瞬間である。皆が固唾を飲んで見守る中、彼は大きな一口で角煮とごはんを頬張った。
そして次の瞬間、彼は双眸を大きく見開き、笑顔で「美味しいです!」と絶賛した後、盛大にむせた。どうやらごはんと角煮が熱かったらしい。しかしこの熱さこそが、「のりたま」の風味をさらに美味しく感じさせるのだ。
実際に、彼は食事を進める中で何度も「のりたま」とマヨネーズを追加していた。確実にカロリーが跳ね上がっている気もするが、どうやら先輩の「のりたま」への愛が伝わったようで安心した。あまりにも美味しそうに食べるので、私も帰宅途中に「のりたま」を買ってしまったのは内緒である。
※追記1
昔、コミックボンボンで連載されていた『コングルGood』という漫画を思い出した。コングルとは普通のコンビニに市販されている物で手軽に作れる「コンビニグルメ」の略称で、主人公の少年は毎回斬新な料理を振舞っていた。今回先輩が教えてくれた「のりたま」のレシピも、まさしくコングルGoodである。
※追記2
ちなみに私の実家では「ゆかり」のふりかけと玉子そぼろを混ぜたごはんが人気だった。美味しいふりかけをご存知の方は是非とも教えて欲しいのである。