ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【199日目】ドッペルゲンガーと鬼ごっこの日

昨夜は珍しく営業職の先輩と会話した。私はエンジニアでありながらも他社の業務システムばかり開発しているため、同僚との関係性が希薄なのである。

せっかくの機会なので色々とお話を伺ってみたかったのだが、先輩の声を聴いているうちに、ある重大な事実に気付いてしまう。こちらの先輩、喋り方や笑い声が私の知り合いとそっくりなのである。

「世の中には自分と同じ顔の人間が3人いる」という話はよく耳にするが、声だけが似ている人物に出会うのは初めての経験だった。この場合も「ドッペルゲンガー」と分類して良いのかは定かでは無いが、目を閉じて話し声を聴いたら本当に似ていて困惑する。

その話を先輩本人にもお伝えしたところ、「是非その人に会ってみたい」というご要望を頂いた。私としても両者の声を聴き比べてみたい願望があったので、快く承諾する。二人の邂逅が楽しみである。

 

そんな話を書きながらふと窓の外に出てみると、夜も更けるというのに子どもたちの遊び声が聴こえてきた。どうやら私の家の前で鬼ごっこをしているらしい。年の頃は10歳前後で、男の子と女の子が一人ずつ。色違いではあるが、お揃いのパーカーを羽織っていたので恐らく兄妹なのだろう。

こんな時間に子どもたちだけで遊んでいると心配になるので、私はベランダからそれとなく二人を見守ることにした。果たして親は何時ごろ迎えに来るのだろうか。最近はこのあたりも治安が悪くなっているので、何かあれば早々に警察を呼ばなければならない。

しかしその心配は杞憂だったようで、間もなくして母親らしき女性が現れた。どうやら近所のコンビニで買い物をして帰る途中だったらしい。

私は胸をなでおろし、自分の部屋に入ろうとした。最後にもう一度子どもたちに目線を配ると、たまたま二人もこちらを見上げていた。その顔は鏡写しのように似ていて、私の目は思わず釘付けになってしまう。まさかドッペルゲンガーの話を書いていた矢先、双子の子どもと出会うとは。

さらに不気味だったのは、その双子の母親らしき女性の顔までよく似ていたことである。どんなに若い母親とは言え、10歳児と同じ顔立ちをしていることに違和感を覚える。

親子は私の視線に気付いたのか、三人揃ってベランダの私を見上げてきた。何となく居心地の悪さを感じて視線を逸らしたのだが、再び向き直ってみるとそこには誰も居なくなっていた。あの人たちは何だったのだろうか。

 

※追記1

ドッペルとはドイツ語で「doppel」と書き、英語の「double」と同語源である。「二重」や「生き写し・コピー」という意味を持つ。

ドッペルゲンガー現象は古くから神話や迷信で語られているが、その実態は肉体から霊魂が分離・有形化したものとする説があり、見た者にとっての「死の前兆」となることも多いそうな。やはり先輩と知人は会わせない方が良いのかも知れない。