ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【66日目】渋谷と3つの誓いの日

私の髪の毛が伸びる速度は異常である。つい先日、美容室に出掛けた記事を書いたような気もするが、またも散髪の時期が訪れてしまった。

地元の美容室で安く済ませる手もあるのだが、以前に左耳を盛大に切られたトラウマがあるので、多少値が張ったとしても腕利きの美容師さんにお願いすることにしている。

今回は行きつけの渋谷の美容室で予約が取れたので、夕方頃から意気揚々と出掛けた。あえて店名は明かさないが、メンズに圧倒的な人気を誇る美容室である。

予約時間を大幅に過ぎてしまったので、もしかしたら入店を断られるのでは無いかと覚悟したが、担当の美容師さんは迷わず「OK!」と答えて下さった。年末の忙しい時期にも関わらず、何という器量の良さだろうか。私は彼に深く感謝し、今後はどんな理由があろうと絶対に遅れないことを誓った。

そんなわけで毎度恒例の散髪タイムである。いつもなら話題に窮して沈黙を保ってしまう私だが、今日は(今日も?)秘策を用意していた。若者の集まる街・渋谷であれば、確実に通用するホットな話題。ずばり、人気のスマホアプリについてである。『どうぶつの森 ポケットキャンプ』を連日プレイしている私からすれば、これほど心強い話題は無い。

実は以前にカットをお願いした際、担当の美容師さんもスマホアプリ中毒であることが発覚していた。欲しいアイテムのためなら、リセマラの手間も重課金も厭わない。それが彼のポリシーだった。

今回もカットを初めてから僅か数分でスマホアプリの話題になり、私は夜神月の如く「計画通り」とほくそ笑んだ。すかさず『どうぶつの森 ポケットキャンプ』の話を始めると、周囲のアシスタントさんまで巻き込んで会話に花が咲いた。自分のコミュニケーション能力が恐ろしくなる。

和気藹々とした雰囲気の中、「レベルはいくつぐらいなんですか?」と訊かれたので「21になったばかりです」と正直に答えると、周囲から驚嘆の声があがった。どうやらこのお店での平均レベルは10前後らしく、他のお客さんと話してもレベル20未満の方が大半とのことだった。

その話を聞いて、私は内心不安になった。もしかしたら今の発言によって、彼らから「こいつマジでどんだけ暇なんだよ。ひくわー」と思われたのでは無いかと。

会社の仲間はみんな同じぐらいのペースでレベルを上げているので、私自身は特別やりこんでいるつもりは無かった。しかし、一般的に見たら「ゲームオタク」のレッテルを貼られて然るべき存在だったのかも知れない。

「暇人」「オタク」「キモい」「不細工」と周囲から罵られる未来を想像して、私の目の前は真っ暗になる。

ところが、彼らの反応はまるで違った。レアアイテムの入手方法や効率的なレベルの上げ方など、あくまで真摯な姿勢を崩さずに私に問い掛けてきたのだ。これこそが本当のコミュニケーション能力。私は先程までの思いあがった自分にローリングソバットを浴びせ、もっと謙虚に生きようと誓った。今日は誓うことだらけである。

そんなこんなで散髪はあっという間に終わった。最後にワックスで全体を整えて貰うと、誰が見ても福士蒼汰さんに瓜二つである。このセット方法を自分でもマスターできれば、私はいつでも福士蒼汰さんになれる気がする。しかしそんな技量は一朝一夕で身に付くものでは無いので、明日にはいつもの冴えない青年に戻ることだろう。残念である。

最後にお店を出る際、『どうぶつの森 ポケットキャンプ』のフレンド登録を求められたので、私は自分のコードである「81350435459」を諳んじて伝えた。

すると彼らは、「えっ……自分のフレンドコード、暗記してるんですか……?」と流石に少しひいた表情を浮かべた。私は逃げるようにエレベーターに乗り込み、ほとぼりが冷めた頃にまた来ようと誓った。以上が本日の3つの誓いである。

 

※追記1

重課金をも厭わない担当の美容師さんは、ドラゴンクエストのアプリにハマっているらしい。「今回は課金しないって決めてるんです」との言葉に、私は密かに胸をなで下ろした。しかし続け様に「スタート期間限定のキャンペーンだけは課金しましたけど!」と言われて、しばし困惑に陥る。

 

※追記2

私の密かな特技は、無秩序に並んだ数字を短時間で記憶することである。昔『ロックマン7』の最強パスワードが話題になり、友達から電話で教えて貰う約束をしていたのだが、その時の手元にはメモ帳が無かった。そのため私は彼の唱える16桁の数字を必死で暗記し、忘れないよう何度も反芻した。その結果、15年近くが経った今でも鮮明に覚えている。「1415 5585 7823 6251」。