【81日目】利き水と味覚の日
昨夜、実家で風呂に入った時のことである。頭を洗っていると、何だか妙に髪が引っかかるような違和感があった。使っているシャンプーとトリートメントは全く同じ筈なのだが、実家の水質が身体に合わなくなってしまったのだろうか。謎である。
そう言えば、人間の身体の約60%は水で構成されているらしい。新生児に至っては体重の75%近くを水が占めているそうで、比率だけで言えば大人のそれを大きく上回る。
さらに人間は水と睡眠を欠かさなければ2週間〜3週間は生きられると言われているが、逆に水分を補給できないと僅か4日〜5日で死に至る。とにかく水は人間にとって欠かせない存在なのである。
そんな訳なので、私は今日から水にこだわってみることにした。今まではお金を出して水を購入することに対して躊躇いがあったのだが、もしかするとこれは大きな間違いだったのかも知れない。思えば美しい女性はいつもミネラルウォーターを飲んでいる。健康と美容の秘訣は、きっと水にあったのだ。
ひとまず薬局に寄ってみたが、どの水が身体に適合するか分からなかったので、色々な種類を買ってみた。店員の女性はひたすら水を買い漁る私を見て、少し不思議そうな表情を浮かべていた。「YouTubeの企画か何かですか?」と質問されたらどうしようと不安になったが、当然ながらそれは杞憂に終わった。
evian、いろはす、Volvic、CRYSTAL GEYSERなどの有名どころを揃えたところで、まずはそれぞれをコップに移してみる。どれもこれも紛うことなく水だった。
ワインのテイスティングの要領で口に含んでみると、ほんの僅かだが味や舌触りに違いを感じる。これは新鮮な体験だった。一口に水と言えど、やはりその成分には明確な違いがあるのだ。
例えばevianは微かに甘い味がする。甘党の私にとっては非常に好みの味なのだが、ネットを見る限り飲み過ぎには気を付けた方が良いとのことだった。(硬水を日常的に摂取すると肌荒れや下痢の症状を引き起こすらしい)
水の知識を学んだところで、もう1度それぞれの味を確かめてみる。今度は先程よりも一層強く違いを感じられるようになった。味覚が研ぎ澄まされていくようである。
今の私なら、それぞれのラベルを見なくとも味を言い当てられる気がした。いわゆる「利き水」というやつである。紙コップの底に銘柄を書き、水を注いだ後でランダムにシャッフルする。日曜の昼間から1人で何をしているんだろうと思いつつ、何も見ないで味の違いだけを確かめてみた。
まず口の中に広がったのは、微かな甘味。これは先程にも味わったので、私は思わず笑みを浮かべてしまう。evianだ。すべて飲み干した後で、確信と共に紙コップの底を見る。
そこには汚い字でVolvicと書かれていた。結局のところ、水は水である。
※追記1
せっかく色々な水が手に入ったので、料理や珈琲にも使ってみることにした。いつもの水道水と違って、風味が豊かになったような気がする。気がする。
※追記2
そう言えば、最近は水素水を見かけなくなった。私の会社の偉い人は水素水の効能を信じきっていたが、今でも飲まれているのだろうか。