ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【112日目】酔っ払いと苛立ちの日

昨夜、仕事から帰る途中のことである。私の目の前を歩いていた大学生ぐらいの女性が、突然倒れ込んだ。周囲の人々は何事かと女性の様子を窺ったが、その中から救いの手が差し伸べられることはなく、再び歩き出していった。何とも淡白な反応である。

私も厄介事に巻き込まれるのは避けたかったが、女性は座り込んだまま息を切らしているので、流石に心配になる。「大丈夫ですか」と声をかけると、彼女はゆっくりと口を開き、「大丈夫、大丈夫」と答えた。

見たところ顔色は悪くなく、むしろ紅潮していた。ほのかに香るアルコール臭から察するに、新年会か何かの帰りなのだろう。

声をかけてしまった手前、放っておくのも気が引ける。私は彼女に肩を貸し、何とか立ち上がらせようとしたが、彼女は微動だにしなかった。己の非力ぶりに情けなくなる。引きずるようにして何とか道路脇に寄せると、女性はうずくまったまま動かなくなった。

これはどうしたものだろう。出来ればこのまま放置して立ち去りたいところだったが、若い女性が道端で眠っていたら、不埒な輩に狙われてしまうかもしれない。さすがにそれは気の毒な気がしたので、私は近くの自販機で水を購入し、彼女に手渡した。

私はしばらくそこで立ち尽くし、女性の回復を待ってみたものの、一向に立ち上がる気配がなかった。間もなくして、道路の向かい側に2人の警察官が通りかかったのだが、こちらに気付く様子もないまま通過してしまう。普段なら私の姿を見るなり職務質問を仕掛けてくるのに、昨夜に限って見落とされたようである。

やがて女性はふらふらと立ち上がり、「帰る」と呟いて歩き始めた。私は彼女の回復を心から喜んだが、そこから3歩ほど進んだところで盛大に転んだ。

仕方ないので私は彼女を立ち上がらせると、家の住所を伺った。幸いなことにあまり遠くなかったので、肩を貸して送ることにした。こうして文字に起こすと私が善人に思われるかも知れないが、酔っ払いの介護ほど面倒なことは無い。心中は早く帰りたい気持ちでいっぱいだった。

Google Mapを頼りに歩き続けること十数分。ようやく女性の自宅にたどり着き、彼女のご両親に引き渡すことが出来た。別に謝礼が欲しかったわけでも無いのだが、彼女の父親らしき人物は私を訝しげに眺めた後、勢い良く扉を閉めた。こちらは貴重なプライベートの時間を費やしたというのに、この対応は少々礼節に欠けるのではなかろうか。

どこか釈然としないまま、私は駅へと踵を返す。衣類には女性のアルコール臭が染み付き、何とも不快な気分だった。まったく、どうして日本人は自制が効かなくなるまで酒を飲みたがるのだろう。海外における酒は、あくまで食事の一環として楽しまれるものだと聞いた。呂律が回らなくなるほどに酔い潰れ、無理に羽目を外す必要があるのだろうか。

帰りの道中にも酔っ払いの吐瀉物が点々としており、私の不快指数は限界を突破していた。もしも私が来世で神に生まれ変わった暁には、アルコールの摂取量に上限値を設けようと固く決意する。

何だか愚痴っぽい話になってしまったが、年末年始は飲み会の多いシーズンなので、警鐘を鳴らす意味で書き認めてみた。成人式を迎えて飲酒を楽しんでいる若者たちも多いことだろう。しかし酒の飲み方を間違えると、確実に何かを失うことになる。

それは大切な人からの愛情かも知れないし、これまでに積み上げてきた信頼かも知れない。いずれにせよ、それらを取り戻すには相当の努力が求められるはずなので、そうなる前に上手な酒との付き合い方を学んで欲しいと思う。

 

※追記1

昔、深夜の世田谷線に乗った時のことを思い出した。その日は週末で多くの乗客が酔っ払っていたのだが、窓際に立っていた男性が噴水のように嘔吐して、近くに座っていた女性を吐瀉物まみれにしてしまった。被害を受けた女性は気丈に振舞っていたが、心の中で泣いていたに違いない。その凄惨な姿があまりに気の毒だったので、3年近くが経った今も鮮明に覚えている。あの人は立ち直ることが出来ただろうか。