【116日目】本の話とネーミングの日
記事にするのを忘れていたが、会社の先輩からお借りした『死刑にいたる病』を読み終えた。この本は櫛木理宇先生の『チェインドッグ』を改題文庫化した作品で、大学生の主人公・雅也が連続殺人犯の依頼を受けて、1件の冤罪の証明に立ち向かう話である。
この作品の魅力は、なんと言っても連続殺人犯・榛村大和(はいむらやまと)の存在感だろう。彼は何故、ハイティーンの少年少女ばかりを狙って殺害したのか。その動機と経歴が明らかになるに連れて、読者は榛村大和に魅了されていくのである。
詳しく話すとネタバレになりかねないので、興味がわいた方はぜひ書店で探してみて欲しい。ハヤカワ文庫JAのコーナーに置いてあるはず。この作品と似たタイトルで、我孫子武丸先生の『殺戮にいたる病』という作品も存在するのだが、こちらも非常に面白いのでお薦めである。
ちなみに先輩は普段あまり小説を読まないらしく、この本を買った理由はジャケ買いに近かったらしい。確かにインパクトのある表紙なので、私の厨二心も大きく揺さぶられた。
この作品をきっかけに先輩が小説好きになってくれたら、「いつか会社に文芸部を創設する」という私の夢も実現に近付く。せっかくの機会なので、先輩に「何故あまり小説を読まれないのか」と伺ってみた。
「本を読む時間が無い」というのも理由の1つのようだが、「登場人物の名前を覚えるのに苦労する」というご意見も合わせて頂けた。確かに長編小説は登場人物が多くなりがちなので、覚えやすい名前だと有難い。
その点で言えば、舞城王太郎先生の『煙か土か食い物』はネーミングが秀逸な作品である。何せメインキャラクター4兄弟の名前が、一郎・二郎・三郎・四郎。ほとんど改行を用いない独特な文体だが、軽快な語り口と覚えやすい名前のおかげで、読み手を飽きさせることが無い。異質な作品が多い「メフィスト賞」受賞作の中でも、際立って目立つ作品である。興味のわいた方は、ひとまず裏表紙のあらすじだけでも読んで頂きたい。良い意味でクレイジーな作品だとお分かり頂けるはずだ。
他にもネーミングが秀逸な作品は多々あるが、TVアニメ『天元突破グレンラガン』も覚えやすい名前が多かったように思う。主人公のシモンは「下」、兄貴分のカミナは「上」という漢字の訓読みが由来になっている。さらにヒロインのヨーコは「横」、敵キャラのヴィラルはライバル(rival)のアナグラムになっていて、すんなりと頭に入ってきた。
あまりにも平凡すぎる名前だと視聴者の記憶に残りづらくなるが、同作品はネーミングに一定の規則性を持たせることで、キャラクターの個性を生み出すことに成功している。
これは物語を作り出すうえで非常に有用なテクニックだと思う。キャラクターの名前と個性を印象づけることが出来れば、読者(視聴者)もストーリーに専念できるからである。
昨年は何かと忙しくて小説を書く時間が減ってしまったが、仕事が落ち着いたら私も久しぶりに物語を生み出してみたいと思う。
今回の記事を踏まえて登場人物には分かりやすい名前をつけたいところだが、主人公にはどうしても格好良い名前をつけたくなってしまう自分がいる。厨二病のジレンマである。
※追記1
Twitterで多くの読書垢さんをフォローしているにも関わらず、私は本に関するツイートをほとんどしていない。今後はブログ内でも色々な書籍をご紹介したいのだが、残念ながら先日「Amazonアソシエイト」の審査に落ちてしまったので、再申請が通ってから本格始動したいと思う。アフィリエイトっぽいことをしてみたいのである。
※追記2
個人的な好みですが、「メフィスト賞」の受賞作は尖ってて面白いです。ちなみに第1回の受賞作は森博嗣先生の『すべてがFになる』で、タイトルをご存知の方も多いのでは。『化物語』シリーズの原作者として知られる西尾維新先生も、第23回メフィスト賞の受賞者だったりします。