【193日目】マリオと12時間の日
ここのところ暖かい気候が続いている。冬の間に体重が増えてしまったので、今日は近所を散策しつつダイエットに励むことにした。
ランニングウェアに身を包み、僅かな小銭とスマートフォンを持って家を出る。時刻は午前5時を回ったところだった。家の近所には大きな公園があるので、その外郭を10周走るのが本日のノルマである。
恐らくノルマを達成する頃には駅前のパン屋さんが開店するので、そこで焼きたてのパンを購入して優雅な朝食を楽しむつもりだった。果たしてダイエットとは何なのだろうか。
初めのうちは意気揚々と走り込んでいた私だが、3周を過ぎた頃には呼吸が大きく乱れ、瀕死のコイキングを彷彿とさせるような形相になっていた。公園を訪れた親子たちが離れていったのも無理はない。完全な不審人物である。
流石にこのまま走り続けると体調を崩しかねないので、4周を過ぎたところで休憩を挟んだ。桜の花びらが舞い散る中、公園のベンチに身をもたれ掛けると心地が良い。
うっかりすると居眠りしそうな陽気だったので、後半のランニングに備えてイメージトレーニングに励むことにした。今日の私はダイエットに本気なのである。
Google Play Storeで『スーパーマリオ ラン』をダウンロードすると、自分が走っている気持ちでマリオを全力疾走させる。彼も年齢の割には少々肥満体な気がするので、この機会に減量したら良いのではないだろうか。気分はライザップの専任トレーナーである。
とは言えこのゲームのマリオは基本的にオートで走ってくれるので、プレイヤーはジャンプの指示をするだけである。少しでもマリオの脂肪を燃焼させるために、私は心を鬼にしてマリオを跳躍させ続けた。
そんなこんなで時間を潰していると、時計の針は6時を指していた。すっかりマリオの減量に夢中になってしまったので、慌てて自分のトレーニングを再開する。
何とか10周を走り終えると、私はある異変に気付いた。まだ時刻は7時を回ったばかりなのに、周囲が妙に暗くなっているのだ。
念のためスマートフォンで時間を確認してみると、正確な時刻は午後の7時。つまり私は『スーパーマリオ ラン』に夢中になるあまり、公園で12時間近くを費やしてしまったのだ。任天堂のゲーム、恐るべし。
※追記1
念のため書いておくと、公園で12時間費やしたのは嘘である。本日はエイプリルフールなのである。本当は5時間ぐらいしかプレイしていない。