ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【209日目】桃太郎と朗読会の日

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ひょんなことから『桃太郎』を朗読することになった。この年齢になると人前で読み上げるのは会議資料ぐらいなので、ちゃんと感情を込められるか不安である。

慣れ親しんだ物語とは言え、登場人物たちの思想や背景まで考えなければ本当の朗読とは言えない。なので私は本番が始まるまでの数秒間、桃太郎に関わった全ての人たちに思いを馳せていた。

育ててくれたおじいさんとおばあさん、道中で出会う頼もしい仲間たち、そして人々の平和を脅かす恐ろしい鬼。彼らの心情や背景を理解してこそ、『桃太郎』という物語に秘められた本質を伝えられると言うものだ。

私は各キャラクターごとのスピンオフ作品を生み出せるまでに物語を熟読し、妄想し、迷走した。その結果、おじいさんとおばあさんの演技に力が入り過ぎてしまい、朗読を始めてから数秒で周囲を爆笑の渦に巻き込むことに成功した。大人が本気で『桃太郎』を読むと、何故か失笑を買うことになるらしい。

ちなみに『桃太郎』繋がりでもう少し話をすると、この作品には幾つかの続編が存在する。1779年に書かれた『桃太郎元服姿』では、鬼たちが財宝を取り戻すために桃太郎へ刺客の娘を送り込むのだが、この娘が桃太郎に惚れ込んでしまい、最終的には使命と恋心に苛まれて自害してしまうのだ。まるで『ウエスト・サイド物語』のような話である。

さらに、かの有名な小説家・尾崎紅葉も『桃太郎』の続編を執筆している。作品名は『鬼桃太郎』で、やはり鬼たちによる復讐劇となっているのだが、こちらは詳細を語ると長くなるので割愛する。興味がある方はGoogle先生に質問して欲しい。

こうして著名な作家たちが『桃太郎』の続編を手掛けていると思うと、ハイパーメディアクリエイターを目指す私としても何かしらの物語を考えてみたくなる。今年のゴールデンウィークは先のスピンオフ作品の執筆に挑むべきなのだろうか。

もしも完成したらこのブログの隠しページに設置しておくので、暇で暇で仕方ない方は探してみて欲しい。恐らく読んで得することは何も無いが、長過ぎる人生の一部分を切り取るぐらいは出来るはずである。

 

※追記1

ご存知の方が多いかも知れないが、『桃太郎』は日本五大おとぎばなし(御伽噺)の1つとされている。残りの4つは『はなさか爺さん』『舌きりすずめ』『さるかに合戦』『かちかち山』らしい。誰が決めたのかは知らない。

 

※追記2

『桃太郎』はかつて貧しい地域で行われていた「間引き」の風習に由来する物語という説もある。川から流れてきた桃は、親によって流されてしまった子どもを指しているのだ。

言われてみると「犬・猿・雉」は「居ぬ・去る・帰じ」とも読めるので、なかなか説得力のある話である。

もう1つ有名なのは陰陽五行説に由来するという説で、こちらもなかなか奥が深い。

陰陽五行説は万物を陰と陽に分類し、森羅万象の構成要素(気)を木・火・土・金・水の5つが循環して変化するという考えである。それぞれに対応する色や果物も存在し、方角(方位)は現在の干支で分類される。この前提を踏まえて『桃太郎』を見てみると、今までとは違った発見が得られるだろう。

まず邪悪なもの(鬼)は「丑寅(北東)」から出入りするため、この方角は俗に「鬼門」と呼ばれる。その対極は「裏鬼門」と呼ばれ、「未申(南西)」で鬼の出入りを封じる方角である。

時系列は「裏鬼門」の線から時計回りで動くので、鬼を封じるには、「金」の領域の果実である「桃」が、「申」「酉」「戌」を同行して、方位「西」へ行くことになるのだ。

単なる偶然の合致かも知れないが、御伽噺に関する考察は非常に面白い。