ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【270日目】ロトの紋章とフラストレーションの日

ドラゴンクエストの漫画と言えば、多くの人が『ダイの大冒険』を連想するに違いない。国民的RPGドラゴンクエスト』の世界観・設定を元にした人気漫画である。

そんな『ダイの大冒険』と双璧を成すのが、かつて月刊少年ガンガンで連載されていた『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』だ。「ロト紋」の愛称で知られるこの作品は、原作ゲームの3作目である『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の100年後の世界を描いている。スライムや竜王といったお馴染みのモンスターも登場するので、ファンとしては嬉しい限りだ。主人公の少年・アルスが成長していく過程も面白い。

そんな「ロト紋」は1997年に連載を終了したのだが、2004年に創刊された「ヤングガンガン」誌上で続編の連載がスタートした。タイトルは『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 〜紋章を継ぐ者達へ〜』。大好きな作品の続編とあって、私は「ヤングガンガン」の創刊当初からこの作品を追い掛けていた。

しかしこの作品、前作と比べるとどうにも盛り上がりに欠ける。その理由の1つが物語の進行速度で、勇者であるはずの主人公がなかなか冒険を始めない。もちろんそれは訳あってのことなのだが、主人公の心情や成長過程を丁寧に描き過ぎるあまり、面白さを感じられるまでに時間がかかるのだ。

更にドラゴンクエストの特徴である「呪文」が封印されているのも、前作との大きな違いと言える。序盤の戦闘は肉弾戦がメインとなるため、少年誌時代のような派手さに欠ける。このあたりに物足りなさを感じる読者も多かったようだ。

そしてもう1つの要因が、登場人物の多さである。前作のキャラクターに加えて、今回からも大勢のキャラクターが登場する。いわゆる群像劇のように物語が進行していくので、なかなか核心に辿り着けないもどかしさを感じてしまうのだ。

これらの理由から、私も誌面で追いかけることは止めてしまったのだが、一昨日の夜に改めて単行本をすべて読んでみた。現在も連載が続いているので最新の30巻まで読んだ感想になるが、これは紛れも無く「ロト紋」の続編である。むしろ、前作の「ロト紋」は今作の伏線に過ぎなかったと思える程に、壮大なストーリーが描かれていた。

盗賊に拾われた主人公が勇者として目覚めていく過程も非常に面白いし、前作から登場しているキャラクターの動向からも目が離せない。物語中盤からは呪文も(限定的にだが)復活するので、前作同様に派手な戦闘シーンを楽しめる。むしろ前半のフラストレーションがあった分、主人公たちがライディンを放った時は思わず「おぉっ!」と叫びそうになった。

最近の週刊誌は読者人気が獲得できなければ打ち切られてしまう恐れがあるので、こうした段階的に盛り上がるストーリーはなかなか描きづらくなっている。しかし藤原カムイ先生は、そんな風潮の真逆を行くスタイルで新しい名作を生み出すことに成功した。

最新の30巻では前作の主要人物が勢揃いし、あの魔王バラモスの亜種とも言える「バラモスフレア」「バラモスブリザード」と対峙する。原作ゲームファンはもちろん、前作においても「バラモス」は非常に魅力的なキャラクターとして描かれていたので、今後の展開から目が離せない。

もしも『ロトの紋章』を未だに読んだことがないという方は、1度漫画喫茶に篭って読破されることをお薦めする。物語としての完成度が非常に高いので、ゲームファンでなくとも楽しめるはずだ。

 

※追記1

『紋章を継ぐ者達へ』の設定は非常に細かく、前作と比べると難解なストーリーに仕上がっている。序盤はその難解さに頭を抱えたが、随所に伏線が張られているので自分なりに予想して読み進める面白さがあった。湖に映る影や、なんてことのない台詞に重大な事実が隠されていたりするので、藤原カムイ先生の巧みさを感じる。