ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【46日目】ハンチョウと響の日

昨夜の話になるが、吉祥寺から戻った後で久々にネットカフェを訪れた。以前から気になっていた『1日外出録ハンチョウ』を読むためである。

この漫画は『賭博破戒録カイジ』に登場した大槻班長(ハンチョウ)を主人公にしたスピンオフ作品だが、何故か本編と打って変わってグルメ漫画である。

金の力で地下労働施設から1日外出する権利を得たハンチョウが、地上の世界で様々な娯楽・快楽に身を委ねる話なのだが、台詞回しがいちいち大袈裟で面白い。

カイジからは「大した悪党」呼ばわりされていた大槻だが、少なくともこの作品を読む限りでは善人そのものである。『中間管理録トネガワ』然り、人の印象とは見方によって変わるものだと実感した。

また、スピンオフと言えど原作をオマージュしたネタも数多く盛り込まれているので、「カイジ」のシリーズがお好きな方は一度ご覧になってみては如何だろうか。個人的には原作と同等、或いはそれ以上に好きである。

 残念ながら昨夜は最新の2巻しか見つからなかったので、読み終えた後は流行の漫画を新規開拓することにした。

 

現在アニメ放送中の『いぬやしき』にも興味を惹かれたが、私が最終的には選んだのは『響 〜小説家になる方法〜』である。確か「マンガ大賞2017」を受賞していたはずなのでご存知の方が多いかも知れない。

簡単にストーリーを説明すると、低迷中の出版社が小説の新人賞を公募したところ、「鮎喰 響」という身元不明の人物(15歳の女子高生=主人公)から手書きの原稿が届き、その作品を巡って文芸界が大きく動き出す話なのだが……色々な意味で面白かった。私も小説が好きなので、尚更楽しく読めたのかも知れない。

 

もう少し詳細な感想を述べたいところだが、多少のネタバレを含んでしまうので、それでもオーケーな方はこの先も読み進めて頂きたい。

ネタバレが嫌な方については、『響 〜小説家になる方法〜』を早急に読んでからこの記事に戻ってきて欲しい。

 

それでは改めて感想を述べるが、まずサブタイトルの「小説家になる方法」について。

残念ながらこの漫画では小説のノウハウ的なことには一切触れられていない。せいぜい登場人物たちが「叙述トリックが見事だった」とか作中作への感想を口にするくらいである。

なので、「小説家になるためにこの漫画を読んで勉強する」という考えの方が居らしたら、早々にその考えを改めることをお薦めする。

この漫画はあくまで圧倒的な文学の才能を秘めた少女が小説家として成長していく姿を描いたものだ。その輝かしい姿に羨望の念を抱くことはあっても、小説を書く技術や感性が磨かれることは無いのでご注意されたし。

では小説好きからするとつまらない作品なのかと訊かれると、これまたノーである。小説が好きで、読んでいるうちに自分でも書きたくなった経験がある人は、間違いなくこの作品の虜になると思う。

主人公の響は高校入学と同時に文芸部に入部するのだが、部活を通じて小説に纏わる様々な体験をしていく。

例えば文芸部の部長は読み終えた小説を「名作」と「クソ」に分けて別々の本棚に仕舞うのだが、響は部長が「名作」と断言する1冊を躊躇なく「クソ」の棚に移そうとする。

2人は真っ向から衝突して本棚ごと押し倒す荒事に発展するのだが、小説の話題でここまで本音をぶつけあえる友達が居ることは、間違いなく幸せだと思う。

自分の学生時代にもこんな文芸部があれば……と妬ましくなるほどに、この漫画の世界は青春と文学に満ちている。きっと読後は私と同じ気持ちになる方が増えるはずなので、私はそういった方々を捕まえて仮想空間の文芸部でも作ろうと目論んでいる。

それとこの漫画の見どころをもう一つご紹介すると、登場人物の半数近くが狂った思考回路をお持ちである。実際の小説家に変わり者が多いかどうかはさておいて、主要どころのキャラクターについて見てみよう。

まず主人公の響は極度の短気で暴力的な少女である。自分の信念は絶対に曲げない心の強さを持っているが、他者に迎合する柔軟さは欠片も持ち合わせておらず、作中で間違いなく一番危険な人物と言えるだろう。

なにせパイプ椅子で人の後頭部を躊躇なく殴るような娘である。他にも学校の先輩の小指を折る、有名作家の顔面に蹴りを入れる、記者会見中にマイクを投げて傷害事件を起こし窓から逃走する、踏み切りに飛び込んで電車を止めるなど余罪がある。

そんな響が何とか平穏に日常生活を送れているのも、面倒見のいいイケメン幼馴染が居るおかげなのだが……この幼馴染も相当に危険な思考回路の持ち主である。

2巻までは欠点らしき欠点の無い完璧超人として描かれていたが、3巻の中盤で彼がシャワーを浴びた後、自室に戻るシーンで衝撃の事実が発覚した。

想い人である響の写真が、壁一面に貼られているのである。恐らく幼少の頃から現在に至るまで撮り溜めてきたものと思われるが、彼は毎晩違う響の写真とキスをして眠るのが日課らしい。なんと言うか、すごかった。

他にも魅力的な登場人物は数多く存在するのだが、紹介し始めるとキリがないので今日はこのくらいにしておく。何だかんだで面白い作品なので、新刊が出る日を楽しみに待ちたいと思う。

 

※追記1

漫画の登場人物に気持ち悪い一面が発覚すると何故か面白くなってしまう。そういう意味で『変ゼミ』は本当に凄かった。なにせあの西尾維新先生が「登場人物がみんな変態だ」と戦慄したほどである。

 

※追記2

サクセスストーリーを読むと、自分も何かしなければという情熱が湧き上がってくる。しかし湧き上がるだけで大抵の人は特に何もしない。そして私は大抵の人である。つまり私は湧き上がるだけで何もしない。三段論法。