ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【60日目】神社と白い少年の日

家の前に新しいマンションが建つらしく、早朝から騒音に悩まされる日が続いている。今日は落ち着いて本を読みたい気分だったので、早々に家から出ることにした。

どこか静かな場所は無いものかと彷徨い続け、気付けば隣駅の神社を訪れていた。私は神仏に詳しい方では無いが、神社の静謐な空気は昔から好きである。特に黄昏時は提灯の明かりがぼんやりと辺りを照らし、荘厳な雰囲気に包まれる。

空は曇天。木々の隙間から漏れる僅かな光を頼りに、鳥居の奥へと進んでいく。枯葉を踏みしめる自分の足音だけが辺りに響いた。

手水舎で身を清め、改めて神社の中を見廻す。この神社は天祖神社と呼ばれ、御祭神は天照大御神である。創建は不詳とされているが、近一帯が開拓された時期を考えると室町時代には神社の形態を成していたと思われる。

境内の狛犬には円形の傷があり、これは昭和26年6月10日の空襲による爆撃の跡だそうだ。きっと戦時中はこの周辺でも多くの命が奪われたのだろう。人間の業の深さを思い知る。

参拝を済ませると、神社の端に移動して文庫本を開いた。手水舎の水の音と、時折訪れる参拝者の話し声以外、何も聴こえない。集中して本を読むには最適な環境だった。

途中、小学生低学年ぐらいの年頃と思われる少年が私の側へと寄ってきた。どうやら私の読んでいる本が気になるらしく、並んで腰掛けてページを捲った。少年が内容を理解できたかどうかは怪しいところだが、初めて読むミステリに興味をそそられている様子が窺える。将来有望な少年だな、と私は思った。

やがて日が暮れる頃に、私は持ってきた文庫本を読み尽くしてしまった。そろそろ帰ろうかと少年を見やると、彼は少しだけ寂しそうな顔をした。また近いうちに訪れると約束し、私はその場を後にした。

秋の休日、神社で見知らぬ少年と読書に耽る。なかなか絵になりそうな光景である。私は彼との思わぬ出会いに感謝した。陰鬱だった心持ちが、少しだけ晴れた気がする。

それにしても、彼はどうして1人で神社を訪れていたのだろうか。白い着物に身を包み、透き通るような肌を持つ少年は、まるで神の使いのようだった。

 

※追記1

神聖な雰囲気を満喫した後は、神社の隣にあるGEOでホラー映画を借りた。急に現代に帰ってきた気分だった。

 

※追記2

神社は何故か気温が低いような気がする。危うく風邪をひくところだった。これから参拝される方はくれぐれもご注意を。