【83日目】安定思考と好奇心の日

今日は久しぶりに1人で昼食を摂ることになった。たまには新しいお店でも開拓しようかと意気込んでいたのだが、気付けば行きつけの汁なし担担麺屋の行列に並んでいた。完全に中毒である。

今日の並びは店外に5人ほどだったが、遅い時間だったので案外スムーズに入店できた。担担麺が提供されるまでの間、テレビをぼんやりと眺めていたのだが、その後に2人組のサラリーマンが私の横に座った。

1人は私と同じ歳ぐらいの青年で、もう1人は40代半ばぐらいだろうか。やや横柄な態度を取っていたので、恐らく青年の上司なのだろう。

2人は近々一緒に出張へ出掛けるらしく、現地の名産品などに期待を寄せていた。上司の男性はこれまでの出張で口にしたものを次々に挙げていき、青年はそれを感心した様子で聞いているのだった。

「お前は出張先で何か美味いもの食ったか？」と尋ねられると、青年の顔が僅かに曇った。「実は僕、安定志向で……」と恥ずかしげに答えると、誰もが聞いたことのある牛丼チェーンやファミリーレストランの名前が挙がった。

これには上司の男性も呆れた様子で、人生は1度しか無いのだから色んな体験をした方が良いと諭していた。青年と同じく安定志向の私は、彼の言うことを真摯に受け止めていた。やはり人間は未知への好奇心を大切にするべきなのだ。

やがて2人にも担担麺が運ばれてくると、上司の男性は「待ってました」と言わんばかりの笑顔を浮かべる。そして青年に向けてこう言った。

「やっぱりここは安定して美味いなぁ、明日からもしばらく来よう」

未知への好奇心とは何だったのか。

※追記1

私も今日は未知の領域に踏み込むために、いつもよりも沢山の鷹の爪を投入した。その結果、全身の細胞（主に消化器系）から盛大なクレームが届いている。あと数時間後に大変なことが起きるらしい。

※追記2

実は密かに行ってみたいカレー屋さんがある。その店のメニューは辛さに応じて「虚空」などのカッコイイ熟語の名前がが付けられているのだが、最も辛いメニューは何故か「アクエリアス」らしい。ちなみにその最上位メニューは、タバスコを常飲するような激辛マニアも悶絶するそうな。