ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【181日目】犯人探しとアイロン台の日

安楽椅子探偵(Armchair Detective)という言葉がある。主にミステリ小説で用いられる呼称で、部屋から出ることなく、あるいは現場に赴くことなく事件を推理する探偵のことである。分かりやすい例を挙げるなら、『デスノート』のLのような存在だろうか。

私はひきこもりであるが故に、安楽椅子探偵に仲間意識を抱いていた。今日も自宅にこもって仕事をしていた訳だが、何だか自分が安楽椅子探偵になったようで朝から気分が高揚していた。

今の私ならどんな難事件でも解けるに違いない。そんな謎の自信を手に入れた私は、以前友人から借りた『どんどん橋、落ちた』を読んでみることにした。綾辻行人先生の著書で、超難問犯人当て小説集である。

犯人当て小説と言えば東野圭吾先生の『どちらかが彼女を殺した』あたりも有名だが、この作品については難なく真相に辿り着くことが出来た。何せ私は正解率1%と呼ばれた雛見沢村の連続怪死事件を解き明かした男である。このぐらいはブレックファースト前なのである。

そんな訳で仕事が終わってから意気揚々と読み始めたのだが、どうにも読む体勢が定まらなくて集中できない。ベッドに横たわって読むと寝落ちする危険性があるので、それこそ安楽椅子にでも座りたい気分だったが、生憎我が家にそんな上等な家具は用意されていなかった。

仕方なくベッドに腰掛けて読み始めた訳だが、何かに寄り掛からないと疲れが溜まってしまいそうである。手頃な勉強机でもあれば良いのだが、流石に今から準備することは難しい。

そのため、急遽アイロンテーブルを簡易的な勉強机に見立てて、両膝を乗せてみることにした。これがなかなか快適である。先程までの雑念が嘘のように消えて、久々の読書を堪能することが出来た。安楽椅子探偵ならぬアイロンテーブル探偵の誕生である。

古今東西、ミステリ小説は数多くの探偵を生み出してきたが、アイロンテーブルで推理するような怪人物は存在しなかったのでは無かろうか。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったものである。

 

※追記1

私は綾辻行人先生のファンである。以前、池袋のジュンク堂でサイン会の列に並んだこともある。絢辻先生の手はとても温かく柔らかで、この手から名作が生み出されているのかと思うと感慨深くなった。奥様である小野不由美先生の作品も大好きです。

 

※追記2

「事実は小説より奇なり」はイギリスの詩人であるバイロン氏の『ドン・ジュアン』の一節から生まれた表現らしい。どうせならもっと違うところで奇を衒いたかった。アイロンテーブルって。

 

※追記3

『どんどん橋、落ちた』の書評と推理については、明日の記事にでも書こうと思う。