ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【230日目】すし詰めと妄想ライブの日

ここのところ悪天候が続いている。個人的に雨は嫌いでは無いのだが、傘を持ち歩くことと電車が遅れることは大嫌いである。

特に雨の日の電車はどこか殺気立っているので、ただ座っているだけでも息苦しくなってくる。これが満員電車になると最悪で、傘についた水滴や他人の吐息がかかる度に不快指数が上がっていく。

今日の帰りはまさにそれで、あと1駅で目的地に到着というところで電車が緊急停止した。どうやら誰かの傘が扉に挟まり、そのまま線路付近へ落下したらしい。

すぐさま駅員による回収作業が行われたが、電車は一向に動く気配が無い。仕事帰りのサラリーマンからは不満の声が漏れ、すし詰めに耐え切れない子どもたちは大声で泣き出した。こうなると電車内は悲惨な状況で、加速度的に不穏なムードが拡がっていく。

私の両サイドに立っていた乗客も5秒おきに舌打ちを繰り返すようになり、まさに一触即発の雰囲気だった。人身事故の常連である私からすれば気にならない程度の停車時間だが、彼らの怒りを浴びるうちに心が荒んできてしまう。

そこで私はヘッドホンを耳につけ、音楽の世界に逃げることにした。WALKMANの再生ボタンを押して目を閉じれば、そこはライブ会場である。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「ダニー・ゴー」をかければ気分は最高潮である。

先程までは他人と肌が触れ合うことすら不快だったのに、ライブ会場だと思えば全く気にならなくなってくる。優しい世界はこうも簡単に出来上がるのだ。このような小さなトラブルに一々反応していたら、この先の人生でどれだけ苦労することか。

まるで悟りの境地を開いたかの如く、私の心は穏やかだった。殺気立つ乗客を哀れにすら思う。今ならドラゴンクエスト冒険の書が消されても許せてしまえそうな気がした。

しかし次の瞬間、突然電車が動き出して隣の乗客から渾身の体当たりを喰らった。さらに彼は吊り革を掴もうとして失敗したらしく、宙に浮いた手が曲がって肘鉄を仕掛けてくる。これが私の顳顬を強く打ち付け、先程までの仏の気分から一転、般若の如く険しい表情になってしまった。もしも今聴いているのがデスメタルだったら、危うく乱闘に発展していたかも知れない。雨の日の電車で音楽を聴く場合は、なるべく穏やかな曲を選ぼうと思った。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが穏やかかどうかは怪しいが。

 

※追記1

雨の日は何故か電車が混みやすい。最寄り駅にも普段は見かけない姿が増えるような気がする。もしかすると雨の日は人口が1.5倍になるキャンペーン中なのかも知れない。誰得である。

 

※追記2

肘鉄を喰らっても怒りを耐えられるのは、以前にもっと痛い思いをしたことがあるからかも知れない。電車の網棚の上に置かれた鞄から、辞書が飛び出してきて後頭部に当たったのである。辞書の落とし主は謝るかと思いきや、友人たちと談笑しながら辞書を拾い上げるだけだった。この頃の私はデスノート信者だったので、辞書に書かれていた名前を自分の手帳に100回ぐらい書いて心を落ち着かせた気がする。もしもこれがデス手帳だったなら、彼は凄惨な末路を迎えていただろう。