ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【239日目】兼務と金言の日

私のような社畜にとって、肩書きが増えることは名誉である。前職では6人ほどのライターチームの一員として働いていたが、程なくしてリーダーとして任命された。

この時は「自分の仕事ぶりが評価された」と純粋に喜んでいたが、今にして思えば少々浮かれ過ぎていた気がする。名刺に刻まれた肩書きが誇らしく、さらに高度な仕事に挑戦したいと情熱を燃やしていた。

それから1年ほど経った頃、念願叶って新しい業務を任されるようになり、肩書きには「兼務」の文字が追加された。直接的な昇進では無かったものの、会社に貢献している実感が得られたので、私は手放しで喜んだ。同僚や家族には謙遜する素振りを見せていたが、今にして思えば天狗になっていたと思う。

そして数日後、私は新しい上司と食事に行くことになった。その時は自分のやる気を伝える良い機会だと思っていたが、私が新しい仕事への意欲を伝える度に、上司は複雑そうな表情を浮かべた。そして独り言のように、「本当は兼務って、健全ではないんだけどな」と呟く。

それは私にとって意外な一言だった。なにせ上司自身、数々のメディアの編集長を務めてきた大人物である。仕事の範囲も多岐にわたったに違いない。そんな人が、どうして兼務について後ろ向きなのか不思議だった。

「もちろん、兼務を任された本人は嬉しいよ。だけど組織の在り方って観点からすると、兼務ってのはあまり良くない。適切な役割分担が出来てないってこともあるからな」

その時の私は「果たしてそうだろうか」と懐疑的だったのを覚えている。もちろん、人員不足で兼務が増えることは組織的に喜ばしくない。しかし今回は本人の意思によって仕事が増えているのだから、悲観するような状況には思えなかった。

その日以降も、私は肩書きに恥じないよう身を粉にして働いた。2人の新人を教育する傍ら、誰よりも多くの原稿を書き続け、自社サービスの改善についても頭を捻った。新しいことに挑戦するのは純粋に楽しかったが、環境の変化に身体の方が追い付かず、体調に異常を来たしてしまう。首が変な方向に曲がったまま動かなくなったのだ。

この時になってようやく、上司の発言が金言であったことに気付いた。新しい仕事を任されることは確かに嬉しい。しかし、それまでに任されていた仕事を疎かにしてしまうようでは、肩書きに振り回されているだけである。

今の職場においても時折「兼務」の話題が出るが、その在り方についてはやはり慎重に思える。任された側としては誇らしさを感じる「兼務」だが、仕事の量と質、そして本人の能力や意欲を見極めなければ、組織を健全な状態で保つのは難しくなるのだろう。

それを知ってのことなのか、今の上司は何かプロジェクトが走る度に「新しい会社を作っちゃえば良いんじゃないですか」と口にする。確かに役割を分担した方が上手く行きそうなケースもあるが、上司の提案に合わせると年間で物凄い数のグループ会社が誕生してしまうだろう。ちょうど先日、会社設立手続きに必要な書類を5分で作成できるサービスを見つけてしまったので、次に同じ発言をした際はすかさずURLを送り付けてみようと思う。

 

※追記1

上司のように今すぐ会社を設立したい方は、「会社設立 freee」で検索してみて欲しい。本当はリンクを貼りたいところだが、例によってスマホから記事を更新しているので、URLをコピーすることが面倒くさい。果たしてこんな人間がアフィリエイトで成功できるのだろうか。