ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【257日目】ペットボトルと暗黒童話の日

今日は朝から奇妙な現象に遭遇した。駅に向かって歩いていたところ、地上3メートル程の高さでペットボトルが飛行していたのである。

最初はペットボトルロケットの実験かと思ったのだが、不思議なことに水を噴射していない。空っぽのペットボトルが宙を舞って、高速で接近してくるのだ。私は回避行動を取るべきか逡巡したが、ペットボトルは道路で左折してどこかに消えていった。

一体どうしてペットボトルが飛んでいたのか、その原因は明らかになっていない。しかし最近はゴミ捨て場でカラスの被害が相次いでいたので、光り物と間違えてペットボトルを持ち帰った可能性がある。

カラスと光り物と言えば、乙一先生の『暗黒童話』を思い出す。この小説には同名の作中作が登場し、映画館で人の言葉を覚えたカラスの物語が描かれていた。

カラスはある日「両目がない少女」と出会い、人間のふりをして会話しようと考える。少女は学校に通っていなかったので、カラスは毎日のように少女のもとを訪れて交流を深めていった。

ここまで聞くとハートフルで良い話なのだが、問題はこの先の展開である。少女の眼窩が空洞であることを不憫に思ったカラスは、代わりの眼球を集めようと決意する。人間を襲っては嘴で眼球を抉り出し、少女のもとへ届けるのが日課になった。

少女はカラスから受け取った眼球を眼窩に差し込む。すると不思議なことに、本来の眼の持ち主が見た最後の光景が、脳裏に映し出されるのだった。

カラスは少女を悦ばせるために、次々と人間を襲い始める。しかしこんな事件が多発すると、徐々に人間の警戒心も強くなり、眼球を奪うことが容易ではなくなった。

仕方なくカラスは墓地へと向かい、傷だらけの女性の遺体から眼球を奪い取るのだが、少女がその眼球を差し込むと……

この先の展開が気になる方は、ぜひ『暗黒童話』を手に取ってみて欲しい。所謂「黒乙一」作品なので好みが別れるところだが、個人的には大好きである。

今朝のカラスも、もしかすると誰かのためにペットボトルを集めていたのかもしれない。眼球を奪われずに済んで本当に良かった。

 

※追記1

乙一先生の作品の中でも、『暗いところで待ち合わせ』は非常に完成度が高いと思う。こちらも盲目の女性が主人公なのだが、『暗黒童話』よりも救いに満ち溢れた作品である。実写版の映画も存在するが、まずは小説版をご覧になって頂きたい。「小説だからこそ」の面白さを存分に楽しめる。