ひきこもりろん

広告ライターからエンジニアに転職し、現在はYouTuberデビューを目論んでいる「ひきこもり志願者」が日々の妄想を書き散らかすブログ。

【300日目】イモリと追跡者の日

気付けばこのブログも300回目の更新である。アクセス数は相変わらず雀の涙だが、飽き性の私が300日間も欠かさず記事を書き続けられたのは、奇跡と言う他ないだろう。

せっかくキリの良い番号なので何か企画めいたことをしようか考えたが、茹だるような暑さのせいで何もする気力が起きない。強いて言うなら先日渋谷を徘徊していた時に「謎の外国人男性の集団」から追いかけ回されたのだが、あまり面白そうな話題でもないので却下する。

そう言えば、今朝も複数人の男子高校生から後をつけられていた。私は普段通りに家を出たのだが、出勤中の道中で偶然「イモリ」を見つけた。あのお腹が赤いトカゲのような生き物である。

これは珍しいと思い、私は早速捕獲を試みたのだが、その途中で「イモリはテトロドトキシンを持っている」という話を思い出した。あのフグと同じ猛毒である。出勤の途中でイモリに毒殺されたとあっては両親に合わせる顔がないので、私はしぶしぶ捕獲を断念する。

イモリは「本当に捕まえなくて良いの?」と挑発するように私の後を着いてきたが、奴が毒物の使い手であることを考えると迂闊に手が出せない。

すると背後から1人の男子高校生が現れ、「イモリだー!」と叫びながら急接近してきた。構図的には男子高校生→イモリ→私である。何だか三角関係のようになってしまったが、私はイモリにも男子高校生にも興味を失っていたので、先を急ごうとした。

その直後、背後で派手な衝撃音が鳴り響く。振り返ってみると、先程の男子高校生が仰向けになって倒れているではないか。私は自分の置かれた状況が理解できなかった。

まさか身の危険を察したイモリがすべての念能力を解放して、ゴンさんのような超強化を図ったのだろうか。それとも、イモリを追い掛け回すことに夢中だった男子高校生が私の存在に気付き、慌てて避けようとしたのだろうか。

真相は未だに闇の中だが、とにかく彼は倒れていた。しかもどういう訳か、顔面から僅かに出血して呻き声をあげている。これはどうしたものだろう。

流石にこのまま見て見ぬ振りも出来ないので彼の元に駆け寄ろうとしたが、その時になってふと気付く。彼の同級生らしき厳つい男子高校生の3人が、遠巻きに私を睨みつけているのである。

まさか彼らは私が叩きのめしたと勘違いしているのだろうか。そうだとしたら冷静に考えて欲しい。こんなモヤシのように貧弱なひきこもりにそんな荒事を出来るわけが無い。なにせ私は大学時代の腕相撲大会で女子にもあっさり敗北したほどの軟弱者である。例え奇跡的にスーパーサイヤ人になれたとしても、現役の男子高校生に敵う道理が無かった。

最初は遠方に見えた彼らだが、次第にこちらへと近付いてきたので私はすかさず距離を取る事にした。ひとまず交番に立ち寄って、男子高校生が倒れていたと報告だけすれば十分だろう。後は彼の友人たちが介抱してくれるに違いない。

ところが、私の予想は大きく外れた。彼らは路上に倒れた友人と少し言葉を交わしたあとで、全員が私の後を着いてきたのである。これはいよいよ濡れ衣をかけられたのかも知れない。それでも私はやってないのである。

流石に危機感を覚えた私は、久しぶりに奥歯の加速装置を起動して超人的な競歩で距離を取った。交番前のお巡りさんに簡単に事情を伝えると、そのまま駅のホームへと向かう。

幸い、改札の中まで追いかけられることは無かったので、私はようやく安堵した。満員電車に乗り込もうとすると、ホームでまたもやイモリを発見する。都内でこんなにも頻繁にイモリを見かけることは珍しい。まさか先程見掛けたのと同じ個体なのだろうか。一体どうやって付いて来たと言うのだ。

もしかすると、先程の男子高校生たちはこのイモリを追い掛けてきたのかも知れない。男の子にとってイモリやトカゲはドラゴンにも等しい存在である。倒れた友人を差し置いてでも追い掛ける価値はある。

しかしこのイモリは私に惚れ込んでいる様子なので、彼らの手に渡ることは無いだろう。今頃地元のホームで私の帰りを待っているはずである。帰り際に「イモリの主食」でも買っていってあげようと思う。

 

追記1

私のかつての恋人は爬虫類と両生類をこよなく愛する変わり者で、私もよくイモリに餌をあげていた。彼女はイモリ以外に白蛇を飼育していたが、ある日2万円で購入したコバルトヤドクガエルをうっかり捕食されてしまい、酷く落ち込んでいた。ちなみにコバルトヤドクガエルはその名の通り毒性を持つので、白蛇の方も大変なことになったらしい。踏んだり蹴ったりとはこの事である。